トップのリーダーシップによるマネジメントから、経営理念を軸にしたマネジメントへ。社員が自ら考え行動する組織文化を創る。

Mipox株式会社は、100年の歴史を持つ研磨や塗布に関する製品・サービスを提供する企業です。リーマンショック直後の業績悪化という危機的状況において、当時就任したばかりの渡邉社長は強力なリーダーシップによる経営体制を敷き、経営の立て直しを図りました。即断即決、スピーディーな意思決定が功を奏して業績が回復。

海外展開やM&Aなど、次の成長に向けて、アクセルを踏み始めたころ、渡邉社長はトップダウン経営の限界を感じ、100億円を超える規模の企業を一人で牽引することの難しさを認識しました。

そして、上場時に策定された既存の経営理念が抽象的で実感が伴わないことに対し、渡邉社長は強い違和感を抱くようになりました。更なる成長を目指す中で、多くの企業と同様に、Mipox株式会社も理念が形骸化し、従業員の行動に結びついていないという課題を抱えていたのです。そして、その課題を解消させるためにイヴォーグ社のサービスを導入されました。そこから組織にどのような変化が生まれたのか、Mipox代表取締役の渡邉様に詳しくお伺いしました。

 

経営理念の刷新への取り組み

さらなる成長を目指す中でトップダウン経営の限界を感じた渡邉社長は、グロービス経営大学院の研修に参加しました。7ヶ月に及ぶ自己探求の中で、Mipox株式会社の本質を「塗る」「切る」「磨く」という言葉に集約したことが、経営理念の刷新へのきっかけとなりました。その後、人事担当者の紹介でイヴォーグ社と出会い、渡邉社長はイヴォーグ社の「メンバーを巻き込んだ経営理念構築の手法」に共感し、導入を決意しました。

イヴォーグ社との半年間にわたる経営理念構築プロジェクトと、それに続く全社的な経営理念の浸透活動は、Mipox株式会社に大きな変化をもたらしました。

全社ワークショップと社員の意識改革

まず取り組んだのは、プロジェクトメンバーの人選。今後の展開を見据えて、経営幹部だけでなく、各セクションから現場の中核メンバーを集めてプロジェクトを組成しました。

プロジェクトメンバーは、経営理念のインフルエンサーとなり、理念経営の実践を体現することが期待されました。

 

変化の起点となったのは、プロジェクトメンバーの合宿でした。90年の歴史の中でどのような事業の転換点があったのか、当時の経営者やメンバーがどのような葛藤を抱え、どのように決断してきたのかを追体験しました。変化を恐れず挑戦してきた先人たちの精神に触れたことで、参加者たちの意識に変化が生まれ、新たな理念への共感が醸成されるようになりました。

 

全従業員を対象とした全社ワークショップでは、参加型のプログラムを実施。理念の背景や意味を体感的に理解できるよう工夫され、従業員一人ひとりが自分の言葉で理念を語り、共有する場が設けられました。この主体的な参画が促された結果、以前はあらゆる意思決定に関与する必要があった社長自身も、「気づけば進んでいた」と語るほど、社員が自律的に業務を進めるようになったのです。社員の意識が大きく変わり、受け身な姿勢から主体的に行動する社員が増加しました。

自律自走型組織への進化

理念が浸透することで、社員一人ひとりが「自分は何をすべきか」を理解し、自発的に業務に取り組むようになりました。新規事業の展開においても、以前は社長主導で進めていたものが、社員からの提案で始まるケースが増加。熊本、金沢、仙台への営業所の開設も、社長が知らない間に社員が主体的に進めていたといいます。これは、まさに自立自走型組織へと進化した証と言えるでしょう。

また、理念をまとめたカルチャーブック「コンパス」が全従業員に配布され、日々の行動に理念を反映させるためのツールとして活用されています。

 

理念経営成功の要因

渡邉社長自身も、「理念経営を成功させるためには、社長自身が確信を持ち、実践することが不可欠」と語っています。経営理念構築プロジェクトでは、組織変革を成功に導くために、経営トップの意識改革が不可欠です。トップダウンの押し付けではなく、理念構築のプロセスにメンバーを巻き込みながら、社員一人ひとりの共感を醸成し、主体的な行動を促すことが、理念経営成功の要となります。

イヴォーグ社の経営理念の構築プロジェクトでは、経営層と現場の距離を縮め、理念を単なるスローガンではなく「組織文化」として根付かせる仕組みを運用することで、社員が主体的に動く組織へと進化させます。

 

持続的な成長への期待

理念浸透は、採用や人材育成を強化したい企業にも有効であり、理念を軸に組織の持続的な成長を支えます。Mipox株式会社の事例が示すように、トップのコミットメントと長期的な視点での取り組みがあれば、理念浸透は実現可能です。社員の意識改革、組織の活性化、そして企業の持続的な成長へと繋がる重要な一歩となります。

 

Mipox株式会社では、理念浸透を通じて社員の主体性が向上し、自律自走型の組織へと進化しました。今後も時代の変化に対応しながら、社員一人ひとりの力を活かした持続的な成長が期待されると同時に、理念が組織文化として根付くことで、更なる組織の活性化や新たな価値創造に繋がることでしょう。

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